北アフリカにおける若年労働力の現状と、グローバル採用における可能性
- Sama Khaled
- 1月18日
- 読了時間: 8分
北アフリカは、世界でも有数の「若い労働力」を抱える地域です。エジプト、モロッコ、チュニジア、アルジェリアといった国々では、毎年大量の若者が労働市場に参入しています。その多くは高い教育を受け、意欲的で、働く機会を強く求めています。
しかし皮肉なことに、こうした若年層の多くが、安定した、自身のスキルに見合った仕事を見つけられていないのが現実です。
グローバル企業、特に国内の採用市場が飽和しつつある日本、欧州、湾岸諸国の企業にとって、この状況は見逃すべきではありません。北アフリカには、構造的に活用されていない巨大な人材プールが存在しているのです。

本記事では、
なぜ北アフリカで若年失業率がこれほど高いのか
若い人材は実際に何を求めているのか
グローバルHRチームは、この地域にどのように向き合うべきか
を整理して解説します。
北アフリカにおける若年失業の全体像
極めて高い若年失業率
国際労働機関(ILO)によると、中東・北アフリカ(MENA)地域の若年失業率は「危機的な水準」にあります。
2023年時点で、MENA全体の若年失業率は 24.4% と、世界平均のほぼ2倍
北アフリカに焦点を当てた2025年の地域調査では 約22〜23%
北アフリカの若者の 31.2% がNEET(就学・就労・職業訓練のいずれにも属さない層)
これは、経済的に活動可能な若者の4人に1人が、教育水準が向上しているにもかかわらず仕事を見つけられていないことを意味します。
問題は「失業」だけではない —— 過少就業とインフォーマル雇用
失業率の数字だけでは、実態のすべては見えてきません。
国連アフリカ経済委員会の政策研究によると、エジプト、モロッコ、アルジェリア、チュニジアでは、インフォーマル経済が労働市場を大きく占めており、特に若者と女性が影響を受けています。
インフォーマルな仕事には、次のような特徴があります。
書面による雇用契約がない
社会保障や福利厚生がない
キャリア形成の道筋が不明確
その結果、多くの若い大卒者が、学歴やスキルに見合わない低生産性の仕事に就き、フラストレーション、低い仕事満足度、高い離職率につながっています。
スキルと仕事のミスマッチ、そして「過剰教育」
北アフリカ全体、そしてアラブ地域全体で一貫して見られるのが、スキルと職務のミスマッチです。
教育システムは大量の卒業生を輩出している一方で、そのスキルが民間企業の需要と一致していないケースが多くあります。
例えばモロッコでは、大学卒業者の失業率が約19%と、全体の失業率を大きく上回っています。
つまり、「高学歴=良い仕事に就ける」という保証はなく、この現実が若者の就職活動やキャリア選択の姿勢を大きく左右しているのです。
グローバルHRチームにとっての意味
日本、欧州、中東のHRリーダーにとって、この状況が示すポイントは明確です。
北アフリカには、教育水準が高いにもかかわらず十分に活用されていない若年層人材が大量に存在し、安定したスキル適合型の仕事——リモートや国際ポジションを含む——を強く求めています。
このモチベーションは抽象的なものではありません。適切な機会が与えられた場合、エンゲージメント、学習スピード、定着率に直接影響します。
北アフリカの若者が本当に求めているもの
安定したフォーマル雇用
インフォーマル雇用が一般的な国では、契約・福利厚生・法的保護のあるフォーマルな仕事は、不安定な生活から抜け出すための唯一の手段と見なされています。
各種調査や政策研究は、若者がフォーマル雇用に以下を結びつけていることを繰り返し示しています。
予測可能な収入
社会保険
長期的な安定
多くの中東諸国では、フリーランスやインフォーマルな仕事は保護が弱く、支払いの遅延や口約束の契約も珍しくありません。そのため、登録された正規雇用こそが、毎月の安定収入を得る最も確実な方法だと若者は学びます。
社会保険も重要です。医療、年金、公的に認められた就労ステータスへのアクセスは、依然としてフォーマル雇用に強く紐づいています。特に家族の経済的支援がない若者にとって、これらは「付加価値」ではなく必需品です。
さらに、文化的背景も影響しています。エジプトをはじめ多くの国では、就職は結婚、住宅取得、家族を支える責任と密接に結びついています。親世代は、キャリア初期のリスクを避け、安定した職を選ぶよう若者に強く勧める傾向があります。
こうした経済的・法的・文化的要因により、フォーマル雇用は「安定の象徴」であるだけでなく、安定を確実に提供するほぼ唯一の仕組みとなっているのです。
国際経験とグローバルな仕事
2025年にアラブ・バロメーターのデータを用いた調査では、北アフリカの若者に強い移住志向があることが示されています。
モロッコ:約70%
チュニジア:約56%
アルジェリア:約56%
エジプト:約49%
もっとも、近年ではリモートワークや国際的なポジションが、物理的な移住に代わる選択肢として機能し始めています。
3. 公正な報酬と透明性のある採用
MENA地域の職場研究では、縁故主義、不透明な採用プロセス、曖昧な評価基準が、信頼と定着率を損なっていることが指摘されています。
多くの地域では、採用が能力よりも個人的なネットワークに依存してきました。その結果、若手人材は「どう評価されるのか」「努力が昇進につながるのか」を見通せず、企業への信頼を失ってきました。
一方で、
明確な職務要件
透明な選考プロセス
公正で分かりやすい報酬体系
を提示する企業に対して、若者の反応は大きく変わります。透明性は「予測可能性」と「尊重」を示すシグナルとなり、これが不足しがちな地域では特に大きな意味を持ちます。
その結果、エンゲージメントとロイヤルティは大きく向上します。北アフリカの若者にとって、透明な採用・マネジメントは単なるベストプラクティスではなく、過去の経験と決定的に異なるものなのです。
北アフリカの若者はどのように仕事を探しているか
国ごとに差はあるものの、共通する傾向があります。
ローカル求人サイト・国家プラットフォーム
エジプトではWuzzufが代表的で、多数の求職者と企業が利用しています。新卒・若手向け採用では依然として重要です。
LinkedInなどのグローバルプラットフォーム
リモート職、外資系企業、国際的なポジションを狙う人材にとって、LinkedInの重要性は急速に高まっています。
大学・インターン・職業訓練
インターン、大学のキャリアセンター、研修・徒弟制度は、労働市場への主要な入口となっています。
インフォーマルなネットワークとフリーランス
個人的な紹介や口コミは依然として重要です。同時に、Khamsatのようなアラビア語圏のフリーランス・マーケットプレイスも、収入や実務経験を得る場として活用されています。
北アフリカから採用する際の重要ポイント
応募数は多いが、適合度にばらつきがある
高い失業率により、求人には非常に多くの応募が集まる傾向があります。
その結果、過剰資格に見える候補者や、職務内容とミスマッチに見える候補者が多く含まれることがあります。
これは個人の意欲の問題というより、構造的な需給ミスマッチを反映したものです。
非公式な経験は履歴書に表れにくい
多くの若年層は、履歴書には明確に記載されない実務経験を持っています。
家族経営の事業
現金払いの仕事
フリーランスやギグワーク
効果的な選考には、肩書きだけでなく、実際に担っていた業務内容やスキルを深掘りする姿勢が不可欠です。
研修とオンボーディングが極めて重要
継続的なスキルミスマッチが存在する環境では、体系的なオンボーディングと育成投資が、長期的な価値創出の鍵となります。
早期に投資を行う企業は、以下の成果を得やすい傾向があります。
生産性の立ち上がりが早い
忠誠心の向上
早期離職率の低下
リモートワークおよび海外企業への高い関心
若者向け調査や求人プラットフォームのデータから、以下への強い志向が確認されています。
リモートワーク
外国企業での就業
国際的なチーム環境
北アフリカの若年層はすでにグローバルな働き方に適応しており、需要は実証済みです。
なぜ北アフリカをグローバル採用戦略に組み込むべきか
教育を受けた若年人材の大規模・未活用な供給
北アフリカは以下の特徴を併せ持っています。
中等・高等教育の高い就学率
非常に高い若年層失業率
その結果、構造的に活用されていない人材プールが形成されています。
高い定着率と長期的成長の可能性
アフリカおよびMENA地域に関する研究によると、若者が以下を得られた場合、
安定したフォーマル雇用
スキルに合致した職務
明確なキャリア成長パス
非公式労働を転々とする層と比べ、高いコミットメントと定着率を示す傾向があります。
おわりに
北アフリカの若年労働市場は、深刻な政策課題であると同時に、グローバル企業にとって稀有な機会でもあります。
高い失業率、過少雇用、インフォーマル雇用の広がりにより、多くの有能な若者が見過ごされ、低品質な仕事に留まっています。しかし同じ条件が、意欲的で国際志向の強い人材層を生み出しているのも事実です。特にエジプト、モロッコ、チュニジア、アルジェリアでは顕著です。
以下に投資するグローバルHRチームは、
構造化され透明性の高い採用
研修を伴うスキル適合型ポジション
リモート対応の業務体制
北アフリカを、ジュニア層からミドル層、将来のリーダー層に至るまでの、信頼できる長期的人材供給源として見出す可能性が高いでしょう。


