エジプト発エンジニア人材:グローバル企業にとっての新たな選択肢
- Sama Khaled
- 2025年12月21日
- 読了時間: 5分
更新日:4 日前

グローバルなテクノロジー変革が加速する中、企業はこれまで以上にソフトウェア・ハードウェアエンジニアの獲得競争に直面しています。日本、ドイツ、UAE、サウジアラビア、さらには米国においても、重要な技術職の人材不足が深刻化しており、イノベーションの停滞や採用コストの高騰を招いています。
こうした状況の中で、競争力を維持するために、HRリーダーたちは採用の視野をグローバルへと広げています。そして今、世界的に高い注目を集めている高成長の人材市場がエジプトです。
人口動態から見るエジプトの強み
エジプトは今、人口動態の大きな転換点にあります。2025年時点での総人口は約1億1,800万〜1億1,900万人とされ、中東・アフリカ地域でも有数の人口規模を誇ります。特筆すべきは年齢構成で、中央値年齢は約24.5歳と非常に若く、国民の半数が20代前半以下です。この際立った若年層の集中は、グローバル対応可能な人材を求める企業にとって、大きな潜在力であり、競争優位性となります。
最新の国家統計によると、18〜29歳の若者は約2,130万人にのぼり、多くが高等教育を受けている、あるいは労働市場に参入しています。国際基準で「若年層」と定義される15〜24歳人口は約1,880万人で、全人口の17.5%を占めています。全体として、エジプト人の約60%が30歳未満であり、世界最大級の若年人材プールを形成しています。
18〜29歳の若年層のうち42.7%が労働市場に参加していますが、失業率は依然として課題です。全体では15.3%で、男女差が大きく、男性は9.9%に対し、女性は37.8%に達しています。一方、全国平均の失業率は約6.4%と、比較的安定しています。
このような若年人口の多さは、経済学でいう「人口ボーナス(デモグラフィック・ディビデンド)」をもたらします。これは、労働年齢人口の割合が高く、扶養負担が低いことで、経済成長が加速しやすい状態を指します。予測では、2030年までに20〜35歳の若年成人は2,700万人を超え、人口の約4分の1を占めると見られています。
適切な教育、デジタルスキル、国際的な就業機会が提供されれば、この世代はテクノロジー、サービス、イノベーション分野における世界的な原動力となる可能性を秘めています。
エジプト人エンジニアが評価される理由
エジプトのテック人材は、グローバルなエンジニアリング需要に直結する、以下のような強みを備えています。
質の高いSTEM教育と競争力のある工学・CSプログラム
エジプトのエンジニアは、非常に堅実なSTEM教育基盤から輩出されています。カイロ大学、アイン・シャムス大学、アレクサンドリア大学、マンスーラ大学、メヌーフィーヤ大学などは、アフリカ有数のコンピュータサイエンス教育機関として評価され、世界的なCSランキングにも名を連ねています。
高い英語力による円滑なコミュニケーション
工学教育や技術文書の多くが英語で行われているため、エジプト人エンジニアは大学時代から英語で学び、働くことに慣れています。
競技プログラミング文化に支えられた数学・プログラミング力
エジプトには、活発な競技プログラミング文化があります。多くの学生がICPC(国際大学対抗プログラミングコンテスト)予選、ハッカソン、CodeforcesやLeetCodeなどのオンライン競技に参加しており、アルゴリズム思考、計算量最適化、実装スピードが重視されています。
EU・GCC・米国向け開発の実務経験
エジプトはすでにITアウトソーシング/オフショア開発拠点として確立されています。欧州や湾岸諸国との時差の少なさ、文化的近接性、英語力を背景に、多くのエンジニアが以下の形で国際案件に携わっています。
自動車、通信、フィンテックなどの多国籍企業R&D拠点
欧州・湾岸企業向けに専属チームを提供する開発会社
RemotePlatzなど、欧州スタートアップと直接つなぐリモートプラットフォーム
高い就業意欲と柔軟性
若年層の失業・不完全就業が比較的高いため、多くの優秀なエンジニアが国際案件やリモートワークを積極的に求めており、モチベーションが高い傾向にあります。
リモートワークへの高い適応力
IT産業が輸出志向であるため、欧州、湾岸、米国チームとのリモート協業に慣れています。
エジプトにおけるエンジニアの給与水準(初級・中級)
給与は企業、都市、ローカル契約か海外向け契約かによって大きく異なりますが、以下はローカル雇用における現実的な目安です。
ソフトウェアエンジニア平均(全レベル)
PayScaleの集計によると、平均年収は約121,700エジプトポンド(約2,500米ドル)で、月給ベースでは約6,000〜10,000ポンド(約125〜200米ドル)が一般的です。
エントリーレベル(0〜2年/カイロ)
Levels.fyiによると、カイロにおけるジュニア職の月額総報酬中央値は約24,000ポンド(約500米ドル)とされています。
ミドル〜ミドルシニア(4〜7年/カイロ)
Glassdoorでは、月額約31,000〜38,000ポンド(約650〜800米ドル)、年収換算で約37万〜46万ポンド(約7,800〜9,600米ドル)と推定されています。
需要が特に高い分野:AI・クラウド・ソフトウェア
エジプト人エンジニアは、以下の成長分野で特に活躍しています。
バックエンド/フルスタック開発(Python、Java、Node.js、PHP)
クラウド/DevOps(AWS、Azure、GCP)
AI・データサイエンス(NLPやコンピュータビジョン分野が強い)
サイバーセキュリティ、ネットワークエンジニアリング
これらはいずれも、世界的に人材競争が最も激しい分野です。
エジプト採用における主な課題
他の海外市場と同様に、エジプトにも事前に考慮すべき点があります。
日本企業や日本の職場文化に対する認知度の低さ
日本企業の給与水準が欧米企業より低いというイメージ
時差を考慮したコラボレーション設計の必要性
体系的なオンボーディングやドキュメント整備
日本や欧州への移住に関するビザ手続き
いずれも致命的な問題ではなく、適切なサポートがあれば十分に対応可能です。
グローバル人材拠点として台頭するエジプト
エンジニア獲得競争が激化する中、企業には品質・スピード・コストのバランスが取れた、スケーラブルな採用戦略が求められています。エジプトは次の点で高い魅力を持っています。
規模が大きく、成長を続けるエンジニア人材
将来技術に直結する高い専門スキル
高い採用投資対効果
リモートおよび多文化環境への高い適応力
エジプトは今後数年で、アジア、欧州、GCC向けに最も価値のあるエンジニア人材供給地の一つになると見られています。グローバル展開を進める企業にとって、もはや問うべきは「エジプトを見るべきか」ではなく、「いつ始めるか」です。


